リリック
黒い雨雲が覆う空の下 気持ち晴れなくて
湿った空気に曇るガラス越し 慣れない街の喧騒
色鮮やかに 咲く傘の花
足下の水溜り揺れる 水面 僕の心も
火照るほどの熱さと雨の匂いに 遠い夏を僕は夢に見る
嗚呼 透き通る風 青い海と空は まだ見えないままだった
雨上がり日が差す久方の夕日 眩し過ぎるから
逸らした目先に短い影 梅雨明けの予感
夏服揺れる 続く晴れ予報
紫陽花はもう枯れた ほら またね 夏が始まる
告げる蝉時雨と風鈴の音 駆け出す胸を抑えきれずに
ただ高く白い雲を追い掛けてく 無邪気だったあの日のよに
落ちる夕日と虫たちの声 少し寂しさ覚える
まだ残る熱 霞める夏の夜風 嗚呼 冷ましてゆく
君の浴衣姿と溶けたアイスと 遠い夏の想い出溢れる
まだあの夏の日 僕は彷徨ってる 嗚呼 帰りたくない
見上げれば天の川 あの日の光景 「ここにいるよ」君が笑った気がした
涙流れる頬 響き渡る音 咲き誇る大倫の花
インスト音源 / コード譜 配布
制作者コメント
皆さん、おはこんばんにちは。
雨宿時雨と申します。
さて、8月に入って猛暑日が続くほど夏真っ盛りな今日この頃でございますが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
かく言う私は、遠慮のないエアコンの使用によって上がった電気代に少々の寒気を感じる程には元気で過ごしております。
…なんて暑中見舞いのような挨拶も程々に、今回リリースいたしました新曲のご紹介をさせていただきたいと思います。
今年に入って第二曲目、総トータルでは第八曲目にあたる今回の新曲。
タイトルは『夏空はまだ遠く』。
題からも察しがつく通り、今回は“夏”をメインテーマに据えて制作させていただきましたが、今回の出来栄えは如何でしたでしょうか。
個人的な感想を述べさせていただきますと、「あまり納得出来ていない」というのが正直な所です。
勿論、不出来なものを提供しているつもりは一切なく、寧ろ私の全力を以て制作した納得出来る楽曲を皆さんにはお聞きいただいているつもりです。
では、一体何に納得出来ていないのか。
端的に一言で言えば“曲調”です。
私の中での夏のイメージは、「爽やかさ、或いはノスタルジーを感じる空気感を纏っている」という印象を元に構成されております。
既存曲を例にして言えば、『快晴』『8.32』『青と夏』『面影ワープ』などの楽曲が私の中での“夏らしい”という評価軸です。
どの楽曲においても、「入道雲が高々と連なる青空を想起させるような広がりを持った曲調」が何よりも特徴的かと思います。
一方、私の楽曲はどうでしょうか。
前回の楽曲が春をテーマにしていた事もあり、今回は夏を題材に新曲を作ると決意した私は、先程挙げた楽曲などを参考、目標にメロディーを考え始めていました。
しかしながら、幾ら思考を凝らせど、所謂“エモーショナル”なメロディーは浮かばず、目標である“広がり”どころか、寧ろ陰鬱な雰囲気のものばかりが私の脳裏に過っていくのです。
そうして時間だけが過ぎていき、とうとう私は「爽やかで広がりのある楽曲への作図イメージを私は恐らく持ち合わせていないのだろう」との諦めを決意したのでした。
その結果、「梅雨が明け、青空の広がる夏を迎えてもなお、過去に囚われて心に雨を降らしたままの主人公」をイメージした今回の楽曲に至ったのです。
要するに、誠に不本意ではありますが、私の技量不足によって目標としていた曲調を変更せざるを得なくなった為に、私が掲げていた最終的な目標を達成する事が出来なかった訳です。
それこそが、今回の楽曲の中で唯一私自身が納得出来ていないポイントとなっております。
とは言え、先ほども申し上げた通り、最終目標である私がイメージする“夏らしさ”には到底届かなかったものの、個人的に一つの楽曲として納得出来るものに仕上がったとともに、今現在の私が持てる最良の力は尽くせたとも思っております。
特に、今回は曲中にSEを差し込む事によって曲にアクセントを加えた事が初の試みでもあり、こだわりのポイントの一つでもあります。
曲調で見出だせなかった“夏らしさ”をSEで補い演出する…
「小道具まで使用して小賢しい」と言われれば、確かに私も納得して頷きますし、それまでの話にはなってしまいますが、「発想としては悪いものではないはず」と自惚れ交じりに自己評価しております。
多少の蛇足感も否めませんが、所感としてはSEがあった方が曲全体に統一感や楽しさが生まれ、聴きやすくなっている実感があります。
そんな良くも悪くもな今回の新曲『夏空はまだ遠く』ですが、今回は曲を先行に歌詞を、歌詞を先行に物語を…という形で制作を進めてまいりました。
通常、曲から物語、或いは物語から曲を構築する私の作曲スタイルでは、物語が最後に付いてくる…という構図は滅多にない珍しい事象です。
なので、正直な話をすれば、先ほど申し上げた楽曲イメージは後付的なものであって、「いつの間にか出来上がっていた陰鬱な雰囲気の曲に夏らしいワードを当てはめていった結果として上記のようなイメージの物語が完成していた」というのが真実です。
素直な感想を言えば、「よくもここまで上手いこと物語が構築出来たものだ」と我ながら感心しております。
“理屈と膏薬はどこへでもつく“…などと云うことわざもございますが、まさしくその通りな気がしております。
とは言え、後付けであれ、そこにストーリー性があるのもまた事実です。
仲の良かった友人と理由あって離れ離れになってしまった主人公が、友人と過ごした夏の日に想いを馳せ、心に雨を降らせながらも未だ見慣れない街で今を生きる…
こうして文章化してみると、目標であった“夏らしさ”とは縁遠いものになってしまったことがよく分かる訳ですが、不思議なもの…いや寧ろ自然の摂理とも言えるのでしょうか、主人公と重なる側面が私の中にあるような気がしております。
今年の春に引っ越し、見知らぬ土地で日々を過ごす私は、寂しいとは言わずとも、友人との過去を思い出す瞬間があるのも屡々です。
そんな私は、本楽曲の主人公程でないにしろ、過去に囚われて今を生きることが出来ていない人間の一人とも言えます。
そうした私の中で隠された心境が、知らず知らずのうちに曲の中に反映され、今回のストーリーを生み出していたのならば、私が主人公に思いを重ねてしまうのは当たり前なのかもしれません。
しかし、だからこそ私は言いたいのです。
夏はもう始まっているのだと。
以前から公言している通り、爽やかで開放感溢れる中にもノスタルジーを感じ、感傷的な気分を味わう事の出来る夏が私は大好きです。
そんな夏が既に訪れているのにも関わらず、いつまでも梅雨時期のように暗い気持ちに浸っているのは勿体ないですし、梅雨に絡めて言えば、季節外れが過ぎるというものです。
勿論、これは飽くまで理屈的でも論理性もない、ただの私の個人的な感想でしかありません。
しかし、自身への戒めとしても語らせていただけるのなら、変える事も戻る事も出来ない過去に縋るくらいならば、やはり今訪れている晴れ晴れとした夏に身を任せ、その場を楽しんでおくべきなのではないか…とも思うのです。
無論、そうは言っても中々前に向き直れないのも分かります。
けれど、考え方次第ではそうした後ろ向きな感覚を夏特有のノスタルジーのせいにしてしまう事も出来るのかもしれません。
そうなれば自ずと前に向き直り、今訪れている夏を楽しむ事が出来てくるのではないでしょうか。
そのようなエールを主人公に送りたくなる今回の新曲『夏空はまだ遠く』。
当初の目標には届かず、少しばかり陰鬱な雰囲気にはなってしまいましたが、意外にもサビでは広がりを意識できたのではないかと思っております。
まだ暑さが続く夏ですが、是非本楽曲をお聞きいただきながら楽しんでいただけたら幸いです。
さて、今回はここで終わらせていただきます。
是非ご感想をお聞かせいただけたら幸いです。
それでは、皆さんまたお会いしましょう。
さようならー。
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